S・Aさん 21歳女性 フリーター
出身:福島県
居住:福島県
学歴:高校卒
家族:母、妹
年収:120万円
お局様に嫌われ、退職まで追い込まれたはじめての社会人
– 高校を卒業されてからの経歴を教えてください。
運良く建設系の大手企業に就職できたんです。1年半くらい働いたんですが辞めてしまって、それから半年くらい家でゴロゴロしてて。ニート状態になってしまったので、これではいけないと思い今はコンビニでアルバイトをしています。もう2年半くらいになりますね。
– 建設会社時代はどんなお仕事を?
事務職で入社して、半年くらいで別の部署に異動になりました。書類の手配をしたり、データ収集を手伝ったりですね。
– どうして辞められたのですか?
これがですね……。人間関係なんです。女性の先輩とソリが合わなくて。それに耐えられなくなって辞めちゃいました。
– 上司ではなく先輩なんですね。
はい。直属の上司も、その他の人もみんないい人だったので、本当に申し訳ない気持ちです。
– 先輩とはおいくつくらいの方なんですか?
何歳だろう……。聞いた話だと、30後半から40前半だと。年齢の話は禁句だといわれていたので。
– ソリが合わないとは、具体的にどんなことがあったのでしょうか。
いろんなことがあったんですけど……。異動した先の部署にいた方だったんですね。仕事でわからないことを聞くんですけど、いつも後回しにされてしまって。いつも「今忙しいからあとで」って言われちゃう。だから、休憩中とか暇そうな時を見計らっても、はぐらかされて教えてくれないんです。教えてくれずに先輩が全部片付けちゃったり。「あれ、教えてくれないんだ」みたいな。
– それはひどいですね。
その割には、面倒くさい仕事は押しつけてくるんです。たとえば、郵便物の束を「帰りに出してきて」とか言われる。私、免許ないので自転車で通ってたんですよ。先輩は車で来てて、家の近くにポストもあるって言ってたのに。でも断ることもできませんから、遠回りしてポストに行ってました。
– 嫌がらせのようなものですか?
そうです! もう辞めてから随分たったんで言いますけど、いじめですよ。
– それはSさんだけにやってた?
……そうです! 私だけです! そういえば。他の人に聞いても「あの先輩は優しいよ」「いちから教えてくれるよ」って言ってましたもん。
– その部署に他に女性はいなかった?
おじさんばかりでした。別の部署にはいたんですが、そこは私とその先輩だけでしたね。1対1の女の戦いって感じでした。
– 若い女性に対するやっかみがあったのでしょうかね。
たしかに、部長が「若い子がきた。わーい」と言ってたことはありました。でもそんなの原因ですかね……。わからないです。
– 辞めるときはどんな風に?
最後の1ヶ月が本当に辛くて。無断欠勤をしてしまい、家で引きこもってたんです。会社用の携帯はガンガン鳴るし。最終的に専務が家に来て、「何で辞めたいの?」って聞くんですけど、隣にあの先輩がいるんですよ! そんなの言えるわけないじゃないですか(笑)
まぁでも、嫌なことは忘れちゃうタイプなんで。今となっては「あートラウマだったな」って感じです。他人事のように感じてますね。
恋に恋する21歳。結婚は30歳くらいまでに。過ぎたら多分やる気なくなる
– 今、お付き合いしている方はいらっしゃいますか?
いないです。
– どのくらいいらっしゃらない?
生まれてから一度もいません。
– 失礼しました。
いいです! 大丈夫です。
– 彼氏は欲しいと思いますか?
まさに募集中です! でも出会いがないんですよ……。中学の頃はそういう話題に興味がなかったし、高校は女子しかいないクラスで。会社でもおじさんばかり。コンビニも出会いあるかなと思ったらないんですよ。
– そういったことも少し期待して入られた?
そういうわけじゃないです。ただ、スタッフはみんな既婚者。お客さんも、おじさんかおじいちゃん、小学校の子ども達とか。その間がいないんですよ、間が!
– 間が?
間が。
– 今まで人を好きになったことはありますか?
「いいな」と思った人は何人かいましたが、「好き」というのはないと思います。遠くから見てるだけで十分でした。
– 結婚願望はありますか?
30歳くらいまでにはしたいです。それを過ぎたら絶対できないという確信があるんです。
– 確信といいますと?
私、よく猫みたいな性格だと言われるんです。一旦やる気がなくなると、もう一度やる気が出ることがないんですよ。30歳過ぎてから興味が出るのは、多分仕事だと思うんです。そうなると、他のこと全部いらないってなりそうな気がしています。なので、その前に結婚しなくちゃって。
– どんな人がタイプですか。
一緒にいて安心できるような人ならいいです。そういう人はいませんが。出会いがないので……。
もっと頭が良ければ、IT企業でシステムエンジニアをやりたかった
– もし戻れるなら、何歳くらいがいいですか?
6歳に戻りたいです。そこからやり直したいです。
– どうしてそう思われますか?
小学校から勉強をやり直したいです。もっと真剣にやってたら、大学に行って、勉強して、自分が望むような仕事に就けたんじゃないかと思うんです。
– 望む仕事とは?
IT関係。システムエンジニアとか、そういうのに興味があって憧れてました。でも資格もないし。勉強不足だから、自分には絶対無理だなと。本当はそっち系で働きたかったなという気持ちはあります。
– いつ頃からそう思われましたか?
高2の頃です。通っていた高校が情報系で、授業でパソコンも使ってたんです。その高校を選んだのは、家が近いのと、推薦を取れたので試験が作文と面接だけだったからって理由なんですが。
でも、そこでパソコンとかプログラミングの授業を受けてたら面白いなと思って。将来働くならこんなことやってみたいと思ったんですが、無理だろうなと。その時、もう一度子供の頃から勉強やり直したいと思うようになってしまいました。
父の顔は知らない。妹の父は別の人。でも、同じ人から生まれたかけがえのない姉妹
– 今はお一人暮らしですか?
実家です。親も働いてるんですが、妹が専門的な学校に行ったのでお金がかかって。親と2人で働いてやっとですね。
– ご家族は何をされているんですか。
私、片親なので母親しかいないんです。
– お父様は?
聞いた話によると、私が生まれてすぐに離婚したらしいです。顔も知らないし、声も聞いたことない。写真も残ってないですね。あれ、なんて言うんでしたっけ、教育費?
– 養育費?
そう、それです。それももらってないって。何があったのかは知らないですけど。だから貧乏でしたね。
– お母様はお父様の話はされますか?
去年、20歳の誕生日にはじめて「生きてるよ」って言われました。
– その時はどう思われましたか?
「へぇ、そうなんだと」と、。それくらいですね。特に会いたいとも思わないし、何も感じないですね。生まれた時からいなかったので、「お父さん」って言われても「ふーん」って感じです。
– もし会いたいと言われたら?
全然大丈夫です。話題を振ってくれないとしゃべれないとは思いますが。特に抵抗はないですね。
– 恨んでるとかもないですか。
ないです。平和です(笑)
– もし会ったら、聞いてみたいことはありますか?
離婚の原因はちょっと聞いてみたいですね。どうして生まれてすぐに離婚したのか。よほど許せない何かがあったのかって。それだけは聞いてみたい。
– お母様に聞いたことはありますか?
ありますが、いつも話題をそらされてました。ろくでもないやつだとは言ってましたが。
– Sさんが生まれてすぐに離婚されたということですが、妹さんは?
妹はまた別の父親なんです。ちょっと複雑なんですが(笑) でも、私は特に重く受け止めてないです。腫れ物扱いもされたくない。自然に受け入れてるんで、抵抗も何もないんです。母は妹の父親とも離婚してしまいましたが。
– その方のことは覚えていますか?
はい。一番覚えているのは、母と大げんかしていた時です。その時私、2人の間でこたつに入ってて。「わー、どうしたらいいんだろう」って思いながらこたつに隠れました。
– その方とはうまくやっていけましたか?
ぼんやりしか覚えてないですけど、割と仲は良かったですね。遊んでもらった記憶もあります。私がはしゃぎすぎて、寝てるところにジャンプしたら怒られました。着地点が大事な部分だったので、すごい痛かったみたいで(笑)
– いなくなったのは何歳頃?
7、8歳くらいかな。妹が2、3歳まではいた気がします。例の大げんか以降は一切見てないですね。
– ということは、妹さんもお父さんの記憶はあまりないんですね。
そうですね。そういえば……。あぁ、そうですね! 私と同じ状況ですね。今気づきました。
– お父さんが違うのはお互いに知っている?
それは2人とも知ってます。でもだから何って感じです。姉妹でしょって。お互い「親」だと思っているのは母だけですね。同じ人から生まれたんだし。そういう認識が2人ともあったと思います。
一番嬉しかったのは、自分のお金でパソコンを買ったこと
– 今までの人生で一番嬉しかったことは何ですか?
パソコンを買ったことですかね。去年の12月頃。それまでパソコンが家になくて、ずーーーと欲しくて。絶対いつか自分のお金で買ってやるって決めてたんですね。
でも電気屋さんで見ると10万円超えるじゃないですか? こりゃもう絶対買えないと思って。高すぎて気力もなくなる。でもある日ネットで、アマゾンで4万5千円のを見つけたんですよ。「おおーー!」って。レビューとか口コミとかいろいろ見て。もうこれだなと。
実際触ってもいないから、買う時は怖かったです。安すぎて動かないんじゃないかとか、すごいちっちゃかったらどうしようとか。
家に届いて、箱を開けて、スイッチ押したら動いた時に、もう「わーい!」って。「自分のパソコンだ!」ってなりましたね。今までの人生で一番嬉しかったのはそれです。
– どうしてパソコンが欲しかったんですか?
家が貧乏だったので、ずっとネット環境がなかったんですね。高校生になってはじめて携帯のネットは使えるようになったんですが、動画とか携帯で見ても小さいので、パソコンで見たかった。それに、お絵かきソフトとかがやりたかったんです。
あと私、ブラインドタッチができるんです! 高校の時習ってたんで。それがまたできるのも嬉しかったですね。
– 今一番幸せな瞬間はどんな時ですか。
これがですね! 家に猫が4匹いるんですが、その猫と一緒に寝るのが一番幸せですね。自分から入ってくるんですよ。「おふとんあけてちょうだい」って。とってもかわいいんです。あと猫じゃらしで遊ぶ時です。遊ぶっていっても本気です。腕に傷がつくくらい。でも楽しくて幸せですね。
– 将来の夢を教えてください。
一軒家を買って、家族と住んで、猫と一緒にずっと遊んでいたいです。結婚してもしなくてもいいので、その夢は叶えたいですね。
Photos by Christian Holmér / Chris Photography(王權) / Scott Schwartz